株式会社sys-cobo

IT業に関するスキル

スキルとは「教養や訓練を通して獲得した能力のこと」です。IT業界では大きく「技術スキル」と「業務スキル」の2つのスキルを要求されます。

技術スキル

簡単にいえば技術的な知識です。システムを開発するために必要な作業工程を並べてみます。本来であればもっと詳細な工程があるのですが、分かりやすく代表的な分野に絞ってみました。

  1. 基本設計
  2. プログラミング
  3. プログラムテスト
  4. システムテスト

これらの作業工程のうちどの工程の経験があるかが技術スキルの骨格といえるでしょう。さらに実際の開発作業である「(2) プログラミング」では何の言語で開発した経験・知識があるかが技術スキルに大きな影響を与えます。それでは世の中にどのようなプログラミング言語が存在するかといいますと、あげれば切がないくらい多いため特徴で分類し列挙させていただきますね。

  • 主に大量のデータを扱う大規模なシステムに使用される伝統的な言語(COBOL等)
  • システムの規模に問わず使用できる伝統的な言語(C言語等)
  • Webシステムが主流になりつつある昨今ニーズの高い比較的新しい言語
  • そのメーカーの機種またはOS上でしか使用できないがメジャーな言語(ASP.NET等)
  • そのメーカーの機種またはOS上でしか使用できないレアな言語(IBMのRPG等)

また、(1)~(4)の工程に平行してさらに2つの分野があります。

(5) 基盤構築(インフラ整備)

これは、開発するシステムが正常かつ高性能に稼働するための基礎(土台)を構築する作業です。作業工程としては全工程の前半部分に行われ、後半には終息することが多いです。そういう意味では長期に渡りプロジェクトに参画する作業ではありませんが、どのようなシステム開発にも必要なため非常にニーズの高い分野であると言えます。

(6) プロジェクト管理、業務推進

これは(5)とは逆に後半のテスト工程で必要とされることが多い分野です。主な作業内容としては、プロジェクトが納期までに順調に進んでいるかの進捗管理を行ったり、他システムとの連携テストを行う際の仲介を行ったりと、プロジェクト全体をマネジメントする分野です。この分野は幅広い知識とコミュニケーション能力、リーダー性を問われる反面、ある程度規模が大きいプロジェクトにのみ必要とされる分野であるためニーズは決して高いとはいえないでしょう。

業務スキル

IT業では技術面と同じくらい業務知識が必要な特殊な業界ともいえます。例えば美容業界を例にあげると、カット、カラー、パーマ、さらにはネイル、エステ、様々な美容に関する技術を持っていればお客さんがどんなお仕事をされている方であろうが関係ありませんよね。

しかし、IT業では顧客のニーズに応えるため、その顧客の業務知識を習得することが必須となります。顧客も多種多様で、金融業(銀行、生保、損保、証券会社)、通信産業(携帯電話、インターネット業者)、医療系(病院、製薬会社)、不動産業、建築土木産業(建設、測量)など色々あります。

特に金融業などは、「何を目的として開発をしているのか」を理解しないと業務に携わることが非常に難しい業界です。さらに知識習得に対する難易度も高いため、現場では設計書を理解すると同時に金融知識の勉強を強いられることが多いです。そのため、このような業務知識を重視する業界(顧客)ほど他の業界より単価が高く、数年携わると発注者側も(単価を上げても)現場に留めようとする傾向があります。

こういった技術スキルと業務スキルの組み合わせで、IT業に携わる人材としての評価が決まるわけです。どのような技術を持ち、どの業界の顧客の仕事をしたことがあるか、さらには何人で構成されたグループの一員でどのようなポジションを経験して事があるかも大きなスキルの一つとして評価されます。

IT業界に携わる者が感じる格差(スキル面)

この項目は、今後IT業界に就職を希望する若い世代の人達に是非読んでいただきたい内容です。

新入社員は大体自社で3~6ヶ月ほどの研修を受けた後、現場に送られます。現場には自社の先輩が常駐していることが多く、その先輩から指導を受けながら業務をこなしスキルを上げていきます。現場に長くいると今度は自分が先輩の立場となり新人を教育することになります。これが大まかな歩みといえます。

ここで最も重要なのが、最初に着任した現場での業務が今後の仕事に大きな影響を与えるということです。非常に納得のいかない表現しかできませんが、「運」が左右するとしか言いようがないのです。というのは、このご時世IT関係者の人口も多い中、全体的に労働者が溢れており、「新人歓迎」などといった現場は皆無です(絶対的に即戦力を望みます)。そのような事情から経営者側はその人材に見合った業務を選ぶことさえできず、入れそうな現場があれば即送り込むのが当たり前となっています。その最初の現場で前述したような将来性の高いスキルを身に着けることができるのかが最大のキーとなるのです。

将来性が高いというのは必要とされる(欲しがる)現場(顧客)が多いと解釈して下さい。

社員にはスキルシート(業務経歴書)という書類が用意され、スキルを重ねる毎にこの書類に記録されます。スキルシート(業務経歴書)には大体以下の項目が用意されています。

  1. 期間・・・何年何月から何年何月まで(Ex.2008年12月~2012年3月)
  2. 担当業務・・・業務内容(Ex.○○生命保険向け新規契約商品開発対応)
  3. 機種/OS・・・どのような機種(汎用機系の場合)またはOSで(Ex.Windows)
  4. 言語/他・・・何の言語やソフトウェアなどを使用して(Ex.ASP,ASP.NET,VB.NET)
  5. 工程・・・どのような工程を(Ex.基本設計~システムテスト)

どのような現場(顧客)でどのような技術スキルを高めれば将来性があるのか?という疑問に明確にお答えするのは難しいのですが、最低限言えるのはまず(1)がある程度長期であることです。私は以前人事を担当した経験もあり、相当数の中途採用応募者の業務経歴書を拝見していました。その際、数カ月単位のプロジェクトを多くこなしてきた者より、数は少なくても長期のプロジェクトに参画してきた者を評価していました。理由は、現場が長いほど人脈が広く、プロジェクト全体を把握できていると判断できるためです。

次に(4)がニーズの高い言語であることです。これは言うまでもなく、即戦力として活躍できる現場が見つかりやすいからです。あるプロジェクトが終息し次のプロジェクトへ移る間にブランクが生じるのは会社にとって非常に痛手です。例えばある顧客のプロジェクトに6名参画させていたとします。そのプロジェクトが終息し、2名は次の現場が決まっていましたが残る4名は未定とします。早期に4名が稼働しないと4人分の売上がない状態が続き損失が増えます。さらには自社に戻っても与える仕事がなく座席すらないとなれば自宅待機という方法を取らざるを得なくなります。私のいた会社ではありませんでしたが、知っている会社ではかなりの人数の社員を自宅待機させ、会社全体の給与を10%カットしたという話も聞きます。そういう意味で、ニーズの高いプログラム言語を習得することは非常に大事なことなのです。後は(5)が広範囲であることでしょうか。これはやはり設計から開発、テストまでと広範囲に渡る工程を経験したことのある人間は、システム開発全体の流れ、ノウハウを習得していると判断できるためです。

上記を踏まえると、例えば最初にテスト要員として小規模な開発現場に送り込まれ、テスト経験者として次の現場でも同じような作業に携わったとします。気づけば入社して数年が経過。他の同期の社員は別の現場でスタートからWebシステムの開発にいそしんでいるとします。この2者を比較した場合、どうしても後者の方が将来性が高いと評価せざるを得ません。前者はテスト工程の経験しかなく実開発(プログラミング)経験がないことが評価を下げる一番の原因といえます。でもこれはもちろん本人の責任ではないのです。会社の指示に従って業務を遂行した結果、たまたま運悪くスキルに差が出てしまったとしか言いようがないのです。

発注者が求める人材の現状

中小企業の間ではお互いの人脈から「某銀行システムでJava(開発言語の一つ)での開発経験者を急募している」といった情報が日々行き交っています。一昔前までは「特定言語の開発経験者」というように発注者側の採用条件は開発言語がメインでした。追加の条件があっても、その言語での開発経験が○年以上といった年数くらいです。ところが今では、「銀行の外国為替決済システム開発経験者でJavaでの開発が3年以上ある方」といった細かい業務内容まで平気で条件に入れてきます。もっとひどくなると、これに「○○銀行の」といった特定の銀行名まで指定されたりします。こんなに門を狭くして人材が集まるのか?と疑問に思いますが、実際応募者がいるからこのような募集の仕方をするのです。言語のみでの応募だと、その日中に3桁の人員が応募に殺到すると聞きます。その数から絞り込むのも発注者として体力が必要になるため条件を厳しくするわけです。

社員の将来

スキル面の格差について前述しましたが、内容はあくまでも世間一般を基準にしたものです。同じ会社に居続けるとした場合、極端に勤怠が悪くない限り昇級・昇格にこのスキルはさほど影響しません。くり返すようですが、会社の指示に従って業務を遂行した結果、たまたま運悪くスキルに差が出たのですから。ただし昇級・昇格の将来に何が待っているかです。

行く行くは現場から自社に席を移し、長として社員管理に徹するというような夢を描いている方も多くいらっしゃるかもしれませんが、そのような役割の人間は何人も要らないですし、そもそも生産性という観点から直接利益を生まない社員が増えれば経営が悪化します。よって、結局は課長であろうが部長であろうが年を過ぎても現場で働く社員が大半です。給料が上がり名刺に「長」の付く役職を与えられる以外は、実務は何も変わらないのです。

また、独立も一つの道ですが、この業界は起業に踏み込むのが非常に難しい業界です。顧客は個人ではなく企業・団体がほとんどですので、技術力、営業力を伴わない限り安定した経営を望むことは不可能です。

よってモラルに反した経営者が多く存在するのも事実です。簡単にいえば、大手企業の権力者と手を組みウラ金で仕事を受けるやり方です(どこの業界でもありがちな話ですが)。

この件に関しては発注者側(大手企業の権力者)の意向で職権乱用し私腹を肥やすケースも少なくありません。実際に耳にした事例を紹介します。
大手企業の権力者を(A)としますWord、Excelをかじった程度のキャバ嬢(B)に「昼の仕事をしてみないか?月収40万くらいでどう?」と話を持ちかけます。合意したら(A)は力の弱い中小企業経営者(C)に、(B)を契約社員として雇う依頼をします。(A)は権力を利用し裏で単価80万で(B)を任意のプロジェクトに配属させます。(A)は(C)に月80万支給し、(C)は(B)に月40万支給します。差額の40万の1割を(C)が受け取り、残りを(A)に渡すといった流れです。このような人材を多く抱えると多額の金が(A)に流れる仕組みになるわけです。

最後に

IT業界に携わる人間はある意味「職人」です。職人とはその道のプロですから、一般的には経験を重ねると若い社員ができることは全て出来て当然ですし、知識も上をいっていなければなりません。ところがこのIT業界では技術における分野の幅が非常に広く、さらに日々新しい手法やそれに関する言葉が生まれます(最近では「クラウド」など)。それゆえに経験を重ねても技術的な知識を下の人間に教えることは難しく、分野によっては下の人間の方がはるかに知識が豊富ということも大いにあります。

また対外的にも言えますが、この業界に携わっている人間はITに関係することであれば何でも知っていると勘違いされがちです。私も取引先の社長から「iPhoneついて聞きたいことがあるんだけど」とか全く使ったことのないソフトウェアに関する質問をされたりして困惑することが多いです。パソコンの仕組みや構造などは素人の方が詳しいことが多いですね。

そんな業界ですから、特に若い世代の方は「今抱えている仕事は将来自分のためになるのか?この会社に在籍していて大丈夫なのか?そもそもIT業は自分に向いているのか?」など自問自答することが多いかもしれません。私も30を超えたあたりで不安を感じ、会社に頼み込んで6年携わった都市銀行のシステム開発から離れました。6年もやってきたし、今後別の業務にアサインされた時に何もできない人間になっているのでは?という懸念が大きかったためです。

IT業界に携わって生きていくためには「好き・興味がある」人間であることが一番かと思います。その気持ちが自然に自分を良い方向に導いてくれるからです。もしくは「好きでもないし興味もそれほどないけど仕事だから」と完全に割り切って臨める方でしょうか。

以上、ほぼ私の私感でまとめたIT企業の実態ですが、ご参考になりましたでしょうか。

引き続きこの記事も更新していきたいと思います。ご購読いただきありがとうございました。

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