この作品に使用している材料は、ご想像の通り粘土でございます。とはいえ、フィギアのような立体的な作品のみならず額縁として飾れる絵画も作成しているため、一般的な粘土ではなく「軽量粘土」と言われるものを使用しております。軽量粘土とはその名のとおり非常に軽く、主にアクリル樹脂を原料とし渇くと発泡スチロールのように軽量なものになります。そのため、作品を奥行の深い額縁に入れて飾っても重量的に全く問題はなく、フィギア(造形)としても写真のような上部(角の部分)が大きく一般的な粘土では表現しにくい形の作品を創造できるのが大きな特徴と言えます。
実は粘土細工を始めたきっかけは、Webデザインの仕事からです。 IT業務に携わる最中、2005年くらいでしょうか。たまたまホームページ制作の仕事を受け持ち、「デザインする」という意味で、「どこにもない」、「今自分ができる」、「時間を要しない」方法を試行錯誤した結果、粘土細工にたどり着きました。つまり、ホームページ上のイラストやボタンの素材を通常のイラストやアイコンではなく、粘土細工を作成し撮影したものにしたのです。 幼い頃からアナログ的(デジタル業種なのでどうしてもこの様な表現になりますが)な絵画や造形といったアート作品を作ることが好きでしたし、当初はこれが今自分のできるベストな方法だと思ったのでしょう。
Webデザインの仕事が終わりしばらくしてから、ホームページから私の作品を見て下さった方のご依頼で、通信教育の紹介雑誌で有名な「ユーキャン」の2007年版講座カタログの表紙デザインに私のクレイアートが採用されることになりました。とはいえ、一介のサラリーマンが“これを機にアートの世界へ”などと思うことはあるはずもなく時が過ぎました。
その後、美容師という職業柄アーティスト気質である妻から「あなたの作品は今後もずっと作り続けるべきだ!」と強く押されながら過ごす日々、ある日彼女から「お店に太陽の絵を飾りたいので描いて欲しい」と相談を受けました。妻の店はSOLという名で太陽を意味するラテン名。ここでまた私の「どこにもない」物作りの意欲が掻き立てられ、粘土での絵画制作へのきっかけになりました。そこで「ONENESS」という作品が生まれました。 そんな最中、幸か不幸か(普通に考えれば完全に不幸なのですが)勤務先の会社が不況のあおりを受け存続できないという状況に陥り、私は個人事業主として働く決意をしました。それから仕事の合間ですが本格的に作品づくりに没頭するようになり今に至るというわけです。 今後も常に楽しい作品を創作していこうと思っておりますので、興味を持って頂いた方は、これからの私の作品を是非ご期待ください!
軽量粘土は揮発性が非常に高いため、手早く形を整えないとすぐに固まってしまいます。これは、大半の軽量粘土に共通した特徴といえます。よって、乾燥した冬の季節より湿度の高い夏場の方が制作がしやすいです。ところが私の場合は、長年クリスマスカードや年賀状のために作品を作るのが通例となっているため、どうしても冬場の作業が増えてしまいます。そこで固まるのを遅くするために色々工夫した結果、今は卓上の小型加湿器を購入し、噴射される霧に当てながら作業しています。ハンドクリームなどを混ぜる方法もいいと聞きますが、固まる過程での形や色の変化が気になるので私はあまり使用しません。
後に「制作過程のご紹介」に記載している作品は「天使の粘土」という軽量粘土に塗料を混ぜたもので作成しています。白色の軽量粘土には種類がありますが、色々試した結果、この粘土は非常に扱いやすいです。「扱いやすさ」で一番大事なのは伸びや弾力性です。これがないと、小さな作品や細かい部分を作ることが困難になってしまいます。以前、100均の軽量粘土を試したことがありましたが、私が購入したものは全く伸びずブツブツ切れてしまう質感で、全く使い物になりませんでした。
次に大事なのは繊維質がどのくらい含まれているかです。繊維質が多いと作品の強度が増します。落としてしまったりと多少の衝撃を与えても折れたりしにくいということです。ところが、あまり繊維質が多いと表面が毛羽立ってしまい、型抜きなどの方法をとったときに断面がフサフサになってしまいます。適度な繊維質の量というのも大事な要素ですね。
最後に大事なのは、軽量粘土には消費期限みたいなものがあることです。商品には特にそのような日付の記載はありませんが、前述したとおり非常に揮発性が高いため、購入して1年くらい放っておくと、未開封の状態でも表面からカチンカチンに固まってしまいます。なので、まとめ買いするのであれば保管状態に気をつける必要がありますし、一番いいのは制作の都度購入し、余さないことでしょうか。
カラフルな作品を作るのに着色する方法は二つあります。一つは「天使の粘土」のような白色の軽量粘土に塗料を混ぜる方法と、もう一つは「Hearty」といったカラー粘土を使う方法です。白色の粘土に色を塗ることだけは避けましょう。挙げた二つの方法と異なり、経年による色褪せがひどいはずです。
それでは二つの方法の特徴を書いてみます。
白色粘土に塗料を混ぜる方法ですが、塗料は水彩絵の具、ポスターカラーなどが良いと思います。この方法は塗料を混ぜて調整するため、カラー粘土を使用するより粘土を無駄に使用することがありません。カラー粘土で目的の色を作るには粘土同士を混ぜるので、迷っているうちにどんどん固まりが大きくなってしまいます(汗)。ただし元が白なので、真っ赤な素材を作りたいとしただけで大量の塗料が必要になってしまいます。特に、黒に関しては不可能といっていいでしょう。より黒を求めるならHeartyのBlackがおすすめです。
作品の規模と色合いで両者を選択するのがベストかもしれません。
ここで私が制作に使用する道具の一部を紹介します。まず下の写真左は言わずと知れた粘土ですが、注目していただきたいのが密封容器です。私はこのような小さな密封容器に粘土を入れ、さらにこれらを大型のタッパーに入れて保存しています。右は粘土を伸ばすときに使用する棒です(伸し棒)。材料の大きさなどで棒を使い分けています。
下の写真左も材料を伸ばすための道具ですが、こちらは製麺機になります。厚さを均一に伸ばしたいときには便利で、以前はパスタ用を使っていたのですが、今はこれを使用しています。右はアートルターと呼ばれる電動工具です。作品によっては乾いてから穴を開けたり削ったりする方が良い場合もありますので、そのようなときに使用しています。後に述べる掛け時計にあるバイオリンのf字孔などはそうですね。
下は自作の金型で、アルミニウムの板をカットし折り曲げて作っています。雪の結晶のようなものは、ページ最初にあるサンタクロースが乗っているトナカイの角に使用しています。大体は一つの作品を作るためだけに作ります。
以上が私が作品を制作する際に使用している道具の一部になります。ご参考までに。
ここでは掛け時計の制作過程をご紹介いたします。個々の作品の制作過程については別の機会に記載します。
まずは台紙を作成します。使う用紙は三枚です。
この三枚を重ねて作成します。
まずは表面の画用紙を30角(30cm×30cm)にカットし、それをあらかじめ作成しておいた木型(時間間隔を示す点と中心を作るためのもの)の底に置きます。この状態で穴あけポンチを穴に差し込み、上からハンマーで叩いてが用紙に穴を開けていきます。
穴を開けた用紙(中心以外)をスプレーのりで黒画用紙に貼りつけます。これを同じ大きさ(30角)にカットし、さらに底の厚紙に貼付け同じく30角にカットします。ちなみに、あらかじめ全て30角にカットしてしまうとキッチリ貼りつけるのが難しくなってしまいます。
三枚を貼りつけたら最後にまとめて中心の穴を開けます。それに作品を並べ、ボンドで貼りつけます。
ボンドが乾いたらムーブメントを取りつけます。これを30角用の額縁に入れて完成です。